第3位パウル・クレー『黄色の中の思考』
黄色い場の中で線と記号が「思考」のように揺れ動く。日本国内に長く秘蔵されていたクレー晩年の重要作。

なぜ国が買った?
東京国立近代美術館は本作を「クレー晩年の傑作のひとつ」と位置づけています。長く日本国内の個人が秘蔵していた作品を取得することで海外流出を防ぎ、既存のクレー作品と組み合わせて二つの世界大戦の間の前衛美術を見せられることを購入の意義として挙げています。ここはかなり明快で、「日本にあった重要作品を国外へ出さず、国立館の通史展示に組み込む」ための購入です。
なぜこの価格?
2億9,700万円の価格内訳は公開されていません。クレーは20世紀美術史の中心作家で、しかも本作は美術館自身が晩年の傑作と評価する作品です。国内の個人コレクションで長く秘蔵され市場に常時出る作品ではなかったこと、1938年のパリ個展にも出品された来歴、クレーの主要作品を国際市場で確保する希少性が価格を押し上げる条件になります。
※公的資料が鑑定・評価の内訳を公表していない場合、本節は希少性、代表性、来歴、規模、エディション等の公表情報から価格を考える材料を整理したものです。
作品について
《黄色の中の思考》は1937年、クレー晩年の作品です。細長い画面の中で黄色を基調とする色面と黒い線・記号的な形が重なり、題名どおり「考えること」そのものが画面上で動いているように見えます。人物や風景を読み取ろうとすると逃げていく一方、線と色の関係として見ると秩序が立ち上がる、クレーらしい作品です。
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「何が描いてあるか」を最初から当てようとしないのがコツです。黄色い場の中で、黒い線が文字に見えたり、顔に見えたり、ただの線に戻ったりする揺れを見る。次に縦長の画面全体を眺め、上から下へ形がどんなリズムで配置されているか追うと、題名の「思考」が比喩ではなく造形として感じられます。
作者について
パウル・クレー(1879–1940)は、20世紀美術を代表する画家の一人です。バウハウスで教えながら、色、線、記号、文字のような形を組み合わせ、現実の物をそのまま描くのではなく「思考や感覚が絵になる瞬間」を探りました。1930年代にはナチ政権下のドイツを離れ、故郷スイスへ戻って制作を続けています。
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- 取得年度
- 2021年度
- 購入価格・取得額
- 2億9,700万円(¥297,000,000)
- 作者
- パウル・クレー
- 作品名
- 黄色の中の思考
- 所蔵先
- 東京国立近代美術館
- 取得主体
- 独立行政法人国立美術館
- 制作年
- 1937年
- 技法・材質
- 油彩・綿布に油性下地
- 寸法
- 98.0×47.0 cm
- 出典
- 独立行政法人国立美術館「令和3年度 美術作品購入一覧」/東京国立近代美術館
購入一次資料 ↗ - 作品画像の出典
- 画像掲載元 ↗
- 画像利用条件
- 作品自体は著作権切れ。国立美術館所蔵作品検索の画像利用規約を確認。
収録済み資料に基づく年度別暫定ランキング。対象機関は年度間で同一ではありません。全国の全自治体を悉皆調査したランキングではありません。 国立美術館4館・国立文化財機構4館・文化庁の令和3年度購入公表を横断し、公表額または政府公共調達で契約額を確認できた作品を順位化。国立国際美術館のメル・ボックナー《セオリー・オブ・スカルプチャー(カウンティング)&プリマー》など、取得額が公表資料で「―」かつ契約額を確認できない作品は順位対象外。10位は同額2作品のため全11作品を掲載。