第9位タイ岸田劉生『壜と林檎と茶碗』
壺だけを描いた連作から、林檎・ガラス瓶・茶碗へとモティーフを広げた転換点の静物画。以後の多様な静物画につながる一作。

なぜ国が買った?
一括取得した29点を時間順に見せるとき、本作は「壺一つ」の凝視から、複数の物を関係づける静物へ移る節目です。美術館はこの作品を、その後の多様なモティーフを持つ静物画の展開を告げる作品と説明しています。作家の完成形だけを集めるのではなく、変化の途中を示す作品まで揃えることで、研究・展示の質が上がります。
なぜこの価格?
個別取得額は1億2,000万円。《壺》と同額です。価格内訳は非公表ですが、1917年という草土社期の重要時点、静物画の展開上の転換点、第5回草土社展出品作、松方三郎旧蔵という来歴が評価材料になります。同じ1億2,000万円でも、材料や大きさではなく「作家の変化を示す節目」としての重要性が強い作品です。
※公的資料が鑑定・評価の内訳を公表していない場合、本節は希少性、代表性、来歴、規模、エディション等の公表情報から価格を考える材料を整理したものです。
作品について
《壜と林檎と茶碗》は1917年、34.3cm四方の油彩です。公式資料によれば、直前の「壺」3部作からモティーフを増やす新展開の最初期にあたり、その後の多様な静物画の出発点になりました。透明なガラス瓶、丸い林檎、白い茶碗という質感の違う三つを狭い画面へ置くことで、「物を見る」実験が一段複雑になります。
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三つの物を別々に見てください。ガラス瓶の透明感、林檎の丸い量感、茶碗の硬い白さ。それぞれの質感を描き分けながら、狭い正方形の中で物同士の距離を緊張させています。《壺》と並べて見ると、題材が増えたことで絵の空間がどう変わったかが一番よく分かります。
作者について
岸田劉生(1891–1929)は1910年代、壺や果物など小さな静物を繰り返し描き、対象の「実在」を絵画でどう掴むかを試しました。この執拗な観察は、同時期の自画像や風景画にも共通する草土社の写実精神につながっています。
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- 取得年度
- 2020年度
- 購入価格・取得額
- 1億2,000万円(¥120,000,000)
- 作者
- 岸田劉生
- 作品名
- 壜と林檎と茶碗
- 所蔵先
- 京都国立近代美術館
- 取得主体
- 独立行政法人国立美術館
- 制作年
- 1917年
- 技法・材質
- 油彩・麻布
- 寸法
- 34.3×34.3 cm
- 出典
- 独立行政法人国立美術館「令和2年度 美術作品購入一覧」/京都国立近代美術館
購入一次資料 ↗ - 作品画像の出典
- 画像掲載元 ↗
- 画像利用条件
- 作品自体の著作権保護期間は満了。国立美術館所蔵作品検索の画像利用条件を確認し、掲載元にクレジット指定がある場合は画像直下にその表記を掲載。
収録済み資料に基づく年度別暫定ランキング。対象機関は年度間で同一ではありません。全国の全自治体を悉皆調査したランキングではありません。 独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立文化財機構4館、文化庁の令和2年度購入公表を横断して順位化。京都国立近代美術館が一括取得した岸田劉生29作品は、公式購入一覧に個別取得額が公表されているため作品単位で集計。取得額が「―」で公開資料から金額を確認できない作品は順位対象外。5位タイ2作品、9位タイ3作品のため、10位までの順位に該当する全11作品を掲載。