第9位タイ岸田劉生『壺』
1917年の静物画。簡素な壺一つを通して、岸田劉生が「物がそこに在る」ことそのものを追い詰めた草土社期の重要作。

なぜ国が買った?
京都国立近代美術館が取得した劉生29点は、初期から晩年までの作風を網羅することが大きな価値です。本作は1917年、第4回草土社展に出品された初期静物の代表作で、劉生が「外見を似せる」写実から、物の存在感そのものを追う方向へ進んだ時期を示します。この一点があることで、後の人物画や京都期とは別の出発点を具体的に見せられます。
なぜこの価格?
個別取得額は1億2,000万円。査定内訳は公開されていません。1917年の草土社期を代表する静物画であること、展覧会歴が明確であること、森村義行旧蔵という来歴、一括購入群の中で初期の核心を担うことが価格の材料です。モティーフが「ただの壺」だから安いのではなく、岸田劉生の美術史上の転換を説明できる壺だから価値があります。
※公的資料が鑑定・評価の内訳を公表していない場合、本節は希少性、代表性、来歴、規模、エディション等の公表情報から価格を考える材料を整理したものです。
作品について
《壺》は1917年制作、40.9×31.7cmの油彩。公式購入資料は、1916年の「壺」3部作に続く作品で、明暗の対比を和らげ、筆致を抑制しながら「実在」を追求したものと説明します。題材は壺一つ。情報量を極端に減らしたからこそ、器の重さ、丸み、置かれた空間が異様に強く感じられます。
ここを見る
壺そのものより、壺の周りを見てください。背景との境界、床面との接点、影、輪郭の微妙な揺れです。派手な色や物語がないぶん、「この壺がどれくらい重そうか」「本当にそこに置いてあるように感じるか」を自分の目で確かめると、劉生が何に執着したかが見えてきます。
作者について
岸田劉生(1891–1929)は、1910年代の草土社期に静物を重要な実験場としていました。果物や壺といった身近な物を、単なる質感描写ではなく「物がそこに存在すること」自体を凝視するように描きます。後の麗子像や東洋美術への関心とは違う、初期劉生の核心です。
基本データを見る
- 取得年度
- 2020年度
- 購入価格・取得額
- 1億2,000万円(¥120,000,000)
- 作者
- 岸田劉生
- 作品名
- 壺
- 所蔵先
- 京都国立近代美術館
- 取得主体
- 独立行政法人国立美術館
- 制作年
- 1917年
- 技法・材質
- 油彩・画布
- 寸法
- 40.9×31.7 cm
- 出典
- 独立行政法人国立美術館「令和2年度 美術作品購入一覧」/京都国立近代美術館
購入一次資料 ↗ - 作品画像の出典
- 画像掲載元 ↗
- 画像利用条件
- 作品自体の著作権保護期間は満了。国立美術館の画像利用条件を確認し、掲載元にクレジット指定がある場合は画像直下にその表記を掲載。
収録済み資料に基づく年度別暫定ランキング。対象機関は年度間で同一ではありません。全国の全自治体を悉皆調査したランキングではありません。 独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立文化財機構4館、文化庁の令和2年度購入公表を横断して順位化。京都国立近代美術館が一括取得した岸田劉生29作品は、公式購入一覧に個別取得額が公表されているため作品単位で集計。取得額が「―」で公開資料から金額を確認できない作品は順位対象外。5位タイ2作品、9位タイ3作品のため、10位までの順位に該当する全11作品を掲載。