第8位岸田劉生『麗子裸像』
娘・麗子を描いた一連の作品の中でも異色の半裸像。劉生の写実追求から東洋美術への関心が強まる時期を示す重要作。

なぜ国が買った?
29点の劉生一括購入は、初期から晩年までを通して見せるコレクション形成が目的でした。《麗子裸像》は、劉生を代表する麗子肖像という主題の中でも1920年の転換期を示す作品です。草土社期の硬質な写実だけでも、晩年の東洋趣味だけでもない。その間をつなぐ作品があることで、作家の変化を「説明」ではなく実物の並びで示せます。
なぜこの価格?
個別取得額は1億5,000万円。価格内訳は非公表ですが、劉生の代名詞である麗子像であること、その中でも半裸という異例の構図、1920年の個展出品作であること、森村義行旧蔵という来歴、そして一括購入コレクションの時間軸をつなぐ重要性が価格を考える材料です。
※公的資料が鑑定・評価の内訳を公表していない場合、本節は希少性、代表性、来歴、規模、エディション等の公表情報から価格を考える材料を整理したものです。
作品について
1920年の水彩《麗子裸像》は、腰に赤い布を巻いた半裸の麗子を描きます。劉生の麗子像の中でもこうした姿は異色で、京都国立近代美術館は赤い腰巻について中世の聖徳太子二歳像を思わせると説明しています。西洋的な人体観察と、日本の古い宗教像・東洋美術への関心が一枚の中で接近する時期の作品です。
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麗子の顔だけでなく、赤い布と上半身の関係を見てください。普通の子供肖像の可愛らしさから意図的に外れ、正面性の強い、少し儀式的な姿に見えます。視線、肩、手、赤い布を順に追うと、写実と「像」としての様式化が同居していることが分かります。
作者について
岸田劉生(1891–1929)は、対象を徹底的に観察する写実から出発し、その後「内なる美」を描くことへ向かいました。とくに娘・麗子を繰り返し描いた肖像群は劉生芸術の中心です。単なる成長記録ではなく、同じ人物を通して写実、精神性、東洋美術への傾斜がどう変わったかを追えるシリーズになっています。
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- 取得年度
- 2020年度
- 購入価格・取得額
- 1億5,000万円(¥150,000,000)
- 作者
- 岸田劉生
- 作品名
- 麗子裸像
- 所蔵先
- 京都国立近代美術館
- 取得主体
- 独立行政法人国立美術館
- 制作年
- 1920年
- 技法・材質
- 水彩・紙
- 寸法
- 50.5×33.6 cm
- 出典
- 独立行政法人国立美術館「令和2年度 美術作品購入一覧」/京都国立近代美術館
購入一次資料 ↗ - 作品画像の出典
- 画像掲載元 ↗
- 画像利用条件
- 作品自体の著作権保護期間は満了。国立美術館所蔵作品検索の画像利用条件を確認し、掲載元にクレジット指定がある場合は画像直下にその表記を掲載。
収録済み資料に基づく年度別暫定ランキング。対象機関は年度間で同一ではありません。全国の全自治体を悉皆調査したランキングではありません。 独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立文化財機構4館、文化庁の令和2年度購入公表を横断して順位化。京都国立近代美術館が一括取得した岸田劉生29作品は、公式購入一覧に個別取得額が公表されているため作品単位で集計。取得額が「―」で公開資料から金額を確認できない作品は順位対象外。5位タイ2作品、9位タイ3作品のため、10位までの順位に該当する全11作品を掲載。