第7位藤原定家ほか『重要文化財 成尋阿闍梨母集』
宋へ渡った僧・成尋を思う老母の悲嘆を綴った私家集の最古写本。藤原定家の手沢本で、古写本としてはほぼ唯一の存在。

なぜ国が買った?
この作品が重要文化財なのは、単に古い有名歌人の本だからではありません。文化遺産オンラインは、本帖を《成尋阿闍梨母集》の「古写唯一本」とし、国文学研究上きわめて貴重と説明しています。文章の内容だけなら翻刻できますが、定家がどこを直し、どう外題を書き、どんな紙と装訂で持っていたかという情報は現物にしかありません。国が保存する理由は、文学作品と物質資料が一体だからです。
なぜこの価格?
購入額は1億8,700万円。価格内訳は非公表です。重要文化財指定、鎌倉前期という古さ、古写本としてほぼ唯一であること、藤原定家の筆跡と所持を示す痕跡、67葉が一帖として残るまとまりが価格を考える重要な材料です。サイズは手のひらに近くても、代替可能性はほぼありません。「小さい紙だから安い」という種類の文化財ではないのです。
※公的資料が鑑定・評価の内訳を公表していない場合、本節は希少性、代表性、来歴、規模、エディション等の公表情報から価格を考える材料を整理したものです。
作品について
縦16.6cm、横15.3cmの小さな綴葉装冊子、67葉。本文には175首の歌が収められ、藤原定家による訂正加筆や集付が含まれます。息子・成尋が五台山巡礼のため入宋したことへの母の悲嘆を、治暦3年(1067)頃から延久5年(1073)までにわたって記す私家集です。現在知られる古写本はほぼこれ一冊で、後世の写しの元にもなった重要な本文資料です。
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まず大きさを意識してください。巨大な屏風や仏像ではなく、16cmほどの小さな本に千年近い個人的な悲しみが残っています。次に本文の流れる仮名、表紙中央の外題、訂正や書き込みを見る。きれいな鑑賞物というより、「誰かが実際に読んで直した本」だと分かる痕跡が一番面白いところです。
作者について
作品を書いた主体は、宋へ渡った僧・成尋の母です。11世紀、老母が息子との別離を嘆き、歌と文章で思いを綴りました。現在残るこの鎌倉時代前期の写本には藤原定家らの筆が確認され、外題も定家筆とされます。つまり「母が生んだ文学」と「定家が手元に置き、書写・校訂した本」という二重の価値を持ちます。
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- 取得年度
- 2020年度
- 購入価格・取得額
- 1億8,700万円(¥187,000,000)
- 作者
- 藤原定家ほか
- 作品名
- 重要文化財 成尋阿闍梨母集
- 所蔵先
- 国(文化庁)
- 取得主体
- 文化庁
- 制作年
- 鎌倉時代
- 技法・材質
- 書跡・典籍・1帖
- 寸法
- 縦16.6×横15.3 cm/67葉
- 出典
- 文化庁「令和2年度 文化庁購入文化財一覧」
購入一次資料 ↗ - 作品画像の出典
- 画像掲載元 ↗
- 画像利用条件
- 作品自体は著作権保護期間満了。文化庁各データベースの画像利用条件を確認し、指定クレジットがある場合は画像直下に表記。
収録済み資料に基づく年度別暫定ランキング。対象機関は年度間で同一ではありません。全国の全自治体を悉皆調査したランキングではありません。 独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立文化財機構4館、文化庁の令和2年度購入公表を横断して順位化。京都国立近代美術館が一括取得した岸田劉生29作品は、公式購入一覧に個別取得額が公表されているため作品単位で集計。取得額が「―」で公開資料から金額を確認できない作品は順位対象外。5位タイ2作品、9位タイ3作品のため、10位までの順位に該当する全11作品を掲載。