第3位編者:洪邁『唐人絶句』
南宋の洪邁が編んだ漢詩選集の版本。全22冊のうち21冊が残り、他の伝存例が知られていないと文化庁が説明する極めて稀少な書物。

なぜ国が買った?
文化庁資料は「他に伝存例は知られていない」と明記しています。これは購入理由を理解する最大のポイントです。文学作品の内容だけなら現代の活字で読めますが、13世紀の南宋で実際に刷られた版面、紙、装訂、そして日本へ渡った伝来そのものは複製できません。散逸すれば21冊のまとまりと来歴の情報が失われるため、国が一括して保存する意味が非常に大きい文化財です。
なぜこの価格?
購入額は3億4,540万円。価格内訳は公表されていません。一冊の「古本」と考えると理解しづらいですが、南宋時代の版本で、他の伝存例が知られず、しかも本来22冊のうち21冊がまとまって残るという条件です。さらに室町期の禅僧の蔵書印と古い表紙を保ち、日本に渡来してからの歴史まで追える。唯一性、セットの残存率、800年近い伝来が価格を支える核心です。
※公的資料が鑑定・評価の内訳を公表していない場合、本節は希少性、代表性、来歴、規模、エディション等の公表情報から価格を考える材料を整理したものです。
作品について
文化庁購入品は全22冊のうち21冊。各冊は約28.2×19.3cmで、嘉定14年から16年(1221~1223)に補刻された南宋時代の版本です。大ぶりな欧陽詢風の書体を用い、各冊には「妙」「安」の墨印があります。これにより、室町時代の禅僧・惟高妙安が所持していた旧蔵本と推定されます。南宋で刷られた本が日本の中世禅林へ渡り、そのまま21冊まとまって残ったという「物の旅」まで含む資料です。
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絵がないから地味、ではありません。まず一頁の文字の大きさと整然とした版面を見てください。次に版心、行数、紙、古い朱色の表紙、そして「妙」「安」の墨印を見る。そこに「南宋で刷る→海を渡る→室町の禅僧が持つ→現代まで残る」という時間が物として残っています。文字を読めなくても、版面そのものをデザインとして見ると面白くなります。
作者について
洪邁(1123–1202)は南宋の官僚・学者・文人で、大部の随筆『容斎随筆』などでも知られます。《唐人絶句》は洪邁が編んだ唐代詩人の絶句選集です。この作品で重要なのは「洪邁本人が筆で書いた一冊」という意味ではなく、彼が編集したテキストが南宋時代の版本として実物の形で残ったことです。
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- 取得年度
- 2020年度
- 購入価格・取得額
- 3億4,540万円(¥345,400,000)
- 作者
- 編者:洪邁
- 作品名
- 唐人絶句
- 所蔵先
- 国(文化庁)
- 取得主体
- 文化庁
- 制作年
- 中国・南宋時代
- 技法・材質
- 書跡・典籍(版本)
- 寸法
- 各 縦28.2×横19.3 cm/21冊
- 出典
- 文化庁「令和2年度 文化庁購入文化財一覧」
購入一次資料 ↗ - 作品画像の出典
- 画像掲載元 ↗
- 画像利用条件
- 作品自体は著作権保護期間満了。文化庁公表資料の掲載条件を確認し、撮影・提供等のクレジット指定がある場合は画像直下に表記。
収録済み資料に基づく年度別暫定ランキング。対象機関は年度間で同一ではありません。全国の全自治体を悉皆調査したランキングではありません。 独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立文化財機構4館、文化庁の令和2年度購入公表を横断して順位化。京都国立近代美術館が一括取得した岸田劉生29作品は、公式購入一覧に個別取得額が公表されているため作品単位で集計。取得額が「―」で公開資料から金額を確認できない作品は順位対象外。5位タイ2作品、9位タイ3作品のため、10位までの順位に該当する全11作品を掲載。