第10位横山大観『白衣観音』
東京国立近代美術館が1億1,124万円で購入した1908年の日本画。既蔵の大観作品では欠けていた明治期の作例を補い、初期から晩年まで画業を通覧できるようにする取得。
公式画像・作品情報を見る ↗
なぜ国が買った?
理由はかなり明快です。東京国立近代美術館は重要文化財《生々流転》(1923年)をはじめ大観の代表作を所蔵していましたが、公式の平成30年度業務実績報告書は「明治期の作例を欠いていた」と明記しています。《白衣観音》を加えたことで、初期から晩年まで大観の画業を作品でたどれるようになりました。つまり、有名作家をもう1点増やしたのではなく、国立コレクションの時間的な穴を埋める購入です。
なぜこの価格?
取得額は1億1,124万円。政府調達で契約額が確認できます。査定の内訳は公表されていませんが、近代日本画の中心作家・横山大観の明治期作品であること、国立美術館が欠いていた時期を埋める重要性、1908年のまとまった大画面、さらに国立美術館の自己評価書が「100年以上所在が確認されず、貴重な作例」と評価している点が価格を理解する材料です。「観音の絵だから1億」ではなく、大観の画業をつなぐ代替しにくい初期作としての価値です。
※公的資料が鑑定・評価の内訳を公表していない場合、本節は希少性、代表性、来歴、規模、エディション等の公表情報から価格を考える材料を整理したものです。
作品について
《白衣観音》は明治41年(1908年)の彩色・絹本による掛軸で、140.3×113.4cm。白衣をまとった観音を描いた、大観40歳前後の作品です。東京国立近代美術館の所蔵作品検索では右下に落款・印章があることも確認できます。後年の大作とは違い、明治期に大観が日本画の新しい表現を探っていた時代を直接見られる作品です。
ここを見る
まず白衣の観音そのものより、人物と周囲の空間の関係を見てください。白い衣が画面の中で大きな面をつくり、顔や手など限られた部分へ視線を集めます。次に後年の《生々流転》などと比べると、大観が明治末に人物画と日本画の空間をどう組み立てていたかが見えてきます。「大観=富士山」の固定イメージを崩してくれるのも、この作品の面白さです。
作者について
横山大観(1868–1958)は、近代日本画を代表する画家です。東京美術学校で学び、岡倉天心らと日本美術院を創設。線描だけに頼らない朦朧体など新しい日本画表現を模索し、明治から昭和まで長い画業を築きました。東京国立近代美術館は《生々流転》など大観の代表作をすでに所蔵していました。
基本データを見る
- 取得年度
- 2018年度
- 購入価格・取得額
- 1億1,124万円(¥111,240,000)
- 作者
- 横山大観
- 作品名
- 白衣観音
- 所蔵先
- 東京国立近代美術館
- 取得主体
- 独立行政法人国立美術館
- 制作年
- 明治41年(1908年)
- 技法・材質
- 彩色・絹本・軸
- 寸法
- 140.3 × 113.4 cm
- 出典
- 政府調達「落札・契約情報」/東京国立近代美術館
購入一次資料 ↗ - 作品画像の出典
- 画像掲載元 ↗
- 画像利用条件
- 国立美術館所蔵作品検索の利用規約を確認。公式掲載に撮影者・提供者等のクレジットがある場合は、その表記どおり画像直下に記載。
収録済み資料に基づく年度別暫定ランキング。対象機関は年度間で同一ではありません。全国の全自治体を悉皆調査したランキングではありません。 文化庁、独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立文化財機構4館の平成30年度取得資料に加え、政府調達の落札・契約情報を横断確認して順位化。アルベルト・ジャコメッティ《ヤナイハラⅠ》は政府調達で14,472,000米ドルの契約額が公表されているため、日本銀行「平成30年9月中において適用」の基準外国為替相場1米ドル=111円で1,606,392,000円に参考換算して順位化。《孔雀置物》ほか40点は41点一括5億3,784万円で、現行公開資料から個別配分額を確認できないため一括案件として明記。九州国立博物館の政府調達《鉢形土器》ほか79件(1億9,134万800円)は、同館の平成30年度購入文化財一覧に各資料の個別購入額が公表されているため、契約総額を1作品としてランキングする旧処理を撤回。これに伴い第10位へ横山大観《白衣観音》1億1,124万円を反映。未確認額は推測しない。