第5位黙庵霊淵『絹本墨画白衣観音図』
文化庁が2億7,000万円で購入。画中に「黙庵」「霊淵」の印があり、平石如砥の賛から1340年頃の制作事情を具体的にたどれる、初期水墨画の重要作例。
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なぜ国が買った?
この作品の強みは「古い水墨画」だけではなく、作者を示す印と、賛を書いた禅僧、その人物がどこにいた時期かまで組み合わせて制作事情を絞れることです。初期水墨画は年代や作者が曖昧な例も多いため、比較の基準になる作品は研究価値が高い。国が取得することで、14世紀の日中禅林交流と日本水墨画成立を説明する基準資料を恒久的に確保できます。
なぜこの価格?
取得額は2億7,000万円。評価内訳は非公表です。南北朝時代まで遡る希少性、黙庵の印、平石如砥の賛、1340年頃という制作事情を絞れる史料性、121cmの大幅として残ることが価格を考える材料です。作者名だけではなく、「いつ・誰と・どの文化圏で作られたか」を研究できる証拠の厚さが価値を押し上げます。
※公的資料が鑑定・評価の内訳を公表していない場合、本節は希少性、代表性、来歴、規模、エディション等の公表情報から価格を考える材料を整理したものです。
作品について
白衣をまとった観音が山中の崖に寄りかかり、滝を眺める大幅です。画中に「黙庵」「霊淵」の二印があり、上部には中国の禅僧・平石如砥の賛があります。文化庁資料は、平石が寧波・天童山景徳禅寺の住持だった1340年頃に賛が書かれたと分かる点を「非常に貴重」としています。
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観音そのものより先に、周囲の崖と滝の墨を見てください。濃淡と省略だけで湿った岩場と空気を作っています。次に上部の賛、画中の印へ視線を移すと、絵と書が別々の装飾ではなく、禅僧同士の交流の痕跡として一つの作品を作っていることが見えてきます。
作者について
黙庵霊淵は14世紀前半に活動した禅僧・画僧で、元へ渡って中国禅林の文化に触れた人物です。日本の初期水墨画は、中国から輸入された絵をただ模倣したのではなく、こうした渡航僧や禅僧ネットワークを通して技法・主題・賛の文化が移動する中で成立しました。
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- 取得年度
- 2018年度
- 購入価格・取得額
- 2億7,000万円(¥270,000,000)
- 作者
- 黙庵霊淵
- 作品名
- 絹本墨画白衣観音図
- 所蔵先
- 国(文化庁)
- 取得主体
- 文化庁
- 制作年
- 南北朝時代・1340年頃
- 技法・材質
- 絹本墨画
- 寸法
- 121.0 × 48.9 cm(1幅)
- 出典
- 文化庁「平成30年度 文化庁購入文化財一覧」
購入一次資料 ↗ - 作品画像の出典
- 画像掲載元 ↗
- 画像利用条件
- 文化庁「平成30年度 購入文化財の概要」掲載画像。利用条件・引用要件を確認し、掲載元にクレジット表記がある場合は原文どおり画像直下に記載。
収録済み資料に基づく年度別暫定ランキング。対象機関は年度間で同一ではありません。全国の全自治体を悉皆調査したランキングではありません。 文化庁、独立行政法人国立美術館、独立行政法人国立文化財機構4館の平成30年度取得資料に加え、政府調達の落札・契約情報を横断確認して順位化。アルベルト・ジャコメッティ《ヤナイハラⅠ》は政府調達で14,472,000米ドルの契約額が公表されているため、日本銀行「平成30年9月中において適用」の基準外国為替相場1米ドル=111円で1,606,392,000円に参考換算して順位化。《孔雀置物》ほか40点は41点一括5億3,784万円で、現行公開資料から個別配分額を確認できないため一括案件として明記。九州国立博物館の政府調達《鉢形土器》ほか79件(1億9,134万800円)は、同館の平成30年度購入文化財一覧に各資料の個別購入額が公表されているため、契約総額を1作品としてランキングする旧処理を撤回。これに伴い第10位へ横山大観《白衣観音》1億1,124万円を反映。未確認額は推測しない。